「ちょっと待って、それ本当?」──情報に流されない自分を育てる“メタ認知”の話
※ 初めに、「この研究は特定の集団を対象としており、すべての人に当てはまるとは限りません」という点をご了承の上ご覧ください。
SNSで健康情報を見かけたとき、『これって本当?』と一瞬立ち止まったことはありませんか?その瞬間、あなたの脳では『メタ認知』という興味深い現象が起きています..
最近、自分の考え方や気分の流れを少し冷静に見られるようになってきたような気がしています。
いわゆる「メタ認知」と呼ばれる、“自分の思考や感情を一歩引いて見つめる力”のことです。
たとえば、何かに悩んでいるときでも、「私は今、こういう考え方をしているな」「この思い込みは本当に正しいのかな」と、少し距離をとって考えることができると、気持ちのコントロールもしやすくなりますし、情報の受け止め方も変わってきます。
これらは、私たちの健康や判断力を支えてくれる重要な力です。
私も、このメタ認知の概念を知ってからは、症状が安定してきて、統合失調感情障害で入院したにも関わらず、わずか一ヵ月でパソコン許可を医師からいただき、VPSでサーバー構築してGhostブログをデプロイするまでに回復しています。
詳しくは、
からご覧ください。
とはいえ、「それって本当に研究でも明らかになっているの?」という疑問があるかもしれません。
そこで今回は、海外の学術論文を通して、メタ認知と情報リテラシー、メンタルヘルス、学びの成果とのつながりについて整理してみました。
医療系学生195人の調査で分かったこと
まずご紹介したいのが、日本の研究チーム(Taniguchi et al., 2024)による、医療系の学生195名を対象にした調査です。
この研究では、COVID-19の影響下で、学生たちのメタ認知と感情面との関係を分析しています。
とくに印象的だったのは、「自分の考えや判断に自信が持てない」と感じる学生ほど、情緒が不安定になる傾向があるという点です。
この傾向は女性の学生に特に強く見られたことから、「誰に、どのような支援が必要なのか」を丁寧に見極める必要性が示されています。
つまり、感情が揺れやすい人ほど、メタ認知(=自分の思考への信頼)を支える教育的な関わりが求められているのです。
感情が揺れた時「今の私はどんな思考パターンにいるかな」と振り返るのもありです。
脳科学が明かす『自信』と『判断力』の秘密
次に取り上げるのは、イギリスの研究者Seowら(2021)によるレビュー論文です。
この論文では、「メタ認知が脳のどこに関係しているか?」という神経科学的な視点から、300人以上のデータを分析しています。
この研究で興味深かったのは、「自信がある」と感じる感覚と、「どれだけ正しく判断できているか」という能力は、まったく別の脳のネットワークで処理されているということです。
実際、うつや不安の傾向が強い人ほど、自分への自信が極端に低くなることも報告されており、これは「自分をどう認知しているか」が心の安定に大きく関係していることを示しています。
これらは、誰かのために動くためにはと考えることで注意を意識的に外に向けられ、自信が少なくなる傾向があるのです。
なぜなら、私たちの頭の中、特に前頭前野と言われる理性をつかさどる部分は衝動的な判断を避けるようになっています。誰かを喜ばせたい、相手のために行動したいと思っている時ポジティブな情報処理に使われている間、暗い思考ではなく優先処理として、落ち着いた状態をたもつことができるからです。
心理学の研究では、ポジティブな活動(人の役に立つ、親切な行動をする等)や思考をするだけで、脳内に報酬系(ドーパミンなど良い気分になる物質)が働き、ストレスホルモンや不安を鎮める効果があると示されています。つまり、他者を喜ばせる行為は自分自身の感情も明るくし、自然とネガティブ思考が生じにくくなるためです。
またリフレーミング(認知の再解釈)といって、建設的な考えに変わるきっかけになるいう心理学もあります。
情報リテラシー教育にメタ認知は生かせるのか?
次に、大学の情報リテラシー教育に関するアメリカの研究をご紹介します。
この研究では、図書館の教育担当者やガイド資料を分析したところ、情報の信頼性を教える際に“自分の判断を振り返る”というステップがほとんど含まれていないことが明らかになりました。
理論的には「情報評価にメタ認知は不可欠」とされているのに、現場の指導ではその視点が抜け落ちてしまっている──このギャップは意外と大きいと感じました。
特にSNSやネット検索が主な情報源になっている今、「自分はどうしてこの情報を信じたのか?」と考える習慣は、誤情報に流されないための大事なスキルになります。
ここでもメタ認知の力が試される場面が増えているのではないかと思います。
情報を見た時に、自分がなぜこれらを信じたくなったのかと3秒考えてみるのもありですね。
健康情報を見極める力とメタ認知の関係
さらにもう一つ、面白い研究をご紹介します。
Redditユーザー502人を対象に行われたこの研究では、健康に関する情報をどれだけ正しく判断できるかは、メタ認知によって大きく左右されることが明らかになっています。
特に「情報の真偽を自分でチェックする力」は、メディアリテラシーだけでなく、「自分は本当に正しく理解できているのか?」と考えるメタ認知の力に支えられているのだそうです。
ただし、情報にさらされすぎている人は、このメタ認知の力がうまく働かなくなる傾向も見られました。
つまり、「知りすぎること」が、かえって自分の判断力を曇らせてしまうリスクもあるのだと気づかされました。
情報過多にならない程度に、一日の情報する領域を絞るのもありかと考えられます。マインドフルネスも効果的だといわれています。ただし、精神疾患や、トラウマを書かている人には悪影響が出る可能性も指摘されています。
頭が働かない時はしっかり休息をとるのが良いでしょう。
問題解決力を高める学びと、メタ認知の深まり
メタ認知は、いわゆる「学び方」そのものにも関係しています。
オーストラリアの大学で行われた問題解決型の授業(PBL)では、たった一学期で学生の汎用的な問題解決力が13%も向上したという結果が出ていました。
ちなみに、「13%の向上は、10人中1人以上が明らかな改善を示すレベル」です。
また、インドネシアの小学生たちを対象にした研究では、「問題をどう理解するか」が、テストの得点にかなり強く影響していたという結果も出ています。
つまり、自分で課題を考え、試行錯誤しながら解決していくプロセスの中で、自分の思考を振り返る力=メタ認知が育つということです。
これは、年齢や科目に関係なく活用できる視点だと感じました。
おわりに──「考えることを考える」力が、心を守る
今回、いくつかの海外論文を読みながら感じたのは、メタ認知は“情報の取り扱い”にも、“感情のゆれ”にも、“学びの質”にも深く関わっているということです。
「自分は今、どう考えているか?」「その考えは、自分を守っているのか、逆に苦しめているのか?」
そうやって内側を丁寧に見つめる力が、私たちの健康や判断力を支えてくれるのだと思います。
情報があふれ、SNSやAIが日常に溶け込んだ今だからこそ、
“考えることを考える”メタ認知の力が、これまで以上に必要とされているのかもしれません。
引用文献
- Metacognition-Associated Factors in Physical and Occupational Therapy Students: A Cross-Sectional Study - PMC
- How Local and Global Metacognition Shape Mental Health
- The Inclusion of Metacognition in Source Evaluation Instruction – DOAJ
- Fact-Checking of Health Information: The Effect of Media Literacy, Metacognition and Health Information Exposure
- Improvement in generic problem-solving abilities of students by use of tutor-less problem-based learning in a large classroom setting - PubMed
- Frontiers | The influence of students’ problem-solving understanding and results of students’ mathematics learning
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