「ちょっと待って、それ本当?」情報に流されない自分を育てる「メタ認知」の話
📖著者: ナオ
はじめに
今回は、前回の記事「保護入院中の状況の中、VPS立ててGhostと戦った患者の記録」の続きとして、「メタ認知」に関する記事を書きました。
この記事の内容に関しては、前回の記事をご覧になられなくても理解できるように配慮していますので、ご安心ください。
もし、前回の記事が気になる方は、ぜひ、チェックしてみてくださいね。
※ 初めに、当記事が紹介している内容に関しての論文に関しては、
「あくまで研究は特定の集団を対象としており、すべての人に当てはまるとは限りません」という点のみご了承の上ご覧ください。
もう、デマに流されたくない!『メタ認知』の力
デマはなぜ、あんなに、早く広がるのか?
あなたにも不思議に思ったことはありませんか?
実は、これには脳の仕組みがあります。
脳の判断には通常、「システム1」と呼ばれる即座に判断する処理が速い直感的な思考と論理的に判断する「システム2」と呼ばれる思考モードが存在しています。
恐怖や感情を司る古い脳、扁桃体は「システム1」を使い、理性や論理的に判断する新しい脳、、前頭前野は「システム2」を司ります。
これらは「二重システム理論」と呼ばれていて、心理学者のKeith StanovichとRichard Westが2000年に発表した論文により、心理学の分野で有名になり定着しました。
つまり、人間の脳は、意識しなければ直感的に判断する「システム1」で物事を判断するため、不安や恐怖を感じる時ほどデマが流れやすいということです。
では、実際の実例から紹介していきましょう。
「コロナウイルス」の時に生まれたデマは防ぎ切ることは可能だったのか?
代表的なのは、「コロナウイルス」が流行り出した頃を思い出すと分かり易いかもしれません。
「コロナウイルス」が、中国の武漢で発生したとき、SNS上で「マスクをすると酸欠になるから危険だ」とか「アルコール消毒は逆に体に悪いからやめたほうがいい 」などの様々なデマ情報が拡散されていました。
中国の人に対しての偏見や差別的な見方も横行していました。
感染源とされる中国人に対して、SNS上で「中国人は危険だから近づくな」などの差別的な投稿も多く見られました。
しかし、ウイルスは人間がコントロールできるものではなく、発生源に関してもコントロールすることは不可能です。
私たちに出来る最低限の感染の予防に関しては、日頃の衛生面(手洗いやうがいなど)を気をつけることぐらいしか対処は難しいのです。
新種のウイルスや地震などの災害、その度に、様々なデマが飛び交うことでしょう。
これでは、完全に防ぎ切ることは出来ません。
では、あなたならどうすればいいと考えますか?
デマに流されないためには、あなたならどうしますか?
では、扁桃体が暴走してしまい、直感的にデマに流されてしまうのを防ぐ方法はあるのでしょうか?
実は、その答え、冒頭で話しています。
あなたには見つけられましたか?
答えが見つかったら、このセクションは飛ばしても大丈夫です。
答えは一つとは限らないと思いませんか?
私は、答えを提示しません。
それが、あなたにとっての全てだからです。
では、次の話に行きます。
実はこうした、物事の前提条件を疑ったり、多角的に物事を見つめてすぐに答えを出さないことが出来るようになるために必要な能力を「メタ認知」といいます。
「メタ認知」とは、「自分の思考や感情を一歩引いて見つめる力」のことです。
たとえば、何かに悩んでいるときでも、
- 「私は今、こういう考え方をしているな」
- 「この思い込みは本当に正しいのかな」
と、このように一歩引いて、俯瞰(ふかん)したり、物事を見つめられるようになれば、感情を制御したり、物事に対して冷静に見つめられるようになります。
つまり、システム2の前頭前野の論理的思考を鍛える事ができれば、熟考した上で、判断するためデマに流されにくくなります。
精神病院でプログラミングをした患者(ナオ)の話
先程紹介した「メタ認知」ですが、実際にどういうところで生きるのかについて、私の体験について紹介しましょう。
前回の記事をご覧になられた方は、こちらに関してはスキップしていただいて大丈夫です。
私は、精神障害の統合失調感情障害で入院したにも関わらず、わずか一ヵ月でパソコン許可を医師から頂き、VPSでサーバー構築してGhostブログをデプロイするまでに回復しています。
こういう言い方をすると、
「まるで、宗教の勧誘じゃないんですか笑」
と言われがちなんですが、
…メタ認知はれっきとした脳科学の分野です。
詳しくは、
からご覧ください。
とはいえ、とはいえですよ。
「それって本当に研究でもメタ認知を高めることがメンタルヘルスや情報リテラシー向上に繋がるの?」
という疑問があるかもしれません。
そこで今回は、海外の学術論文を通して、メタ認知と情報リテラシー、メンタルヘルス、学びの成果とのつながりについてお話していきます。
医療系学生195人の調査で分かったこと
まずご紹介したいのが、日本の研究チーム(Taniguchi et al., 2024)による、医療系の学生195名を対象にした調査です。 この研究では、COVID-19の影響下で、学生たちのメタ認知と感情面との関係を分析しています。
とくに印象的だったのは、「自分の考えや判断に自信が持てない」と感じる学生ほど、情緒が不安定になる傾向があるという点です。 この傾向は女性の学生に特に強く見られたことから、「誰に、どのような支援が必要なのか」を丁寧に見極める必要性が示されています。
つまり、感情が揺れやすい人ほど、メタ認知(=自分の思考への信頼)を支える教育的な関わりが求められているのです。
感情が揺れた時「今の私はどんな思考パターンにいるかな」と振り返るのもありです。
脳科学が明かす『自信』と『判断力』の秘密
次に取り上げるのは、イギリスの研究者Seowら(2021)によるレビュー論文です。 この論文では、「メタ認知が脳のどこに関係しているか?」という神経科学的な視点から、300人以上のデータを分析しています。
この研究で興味深かったのは、「自信がある」と感じる感覚と、「どれだけ正しく判断できているか」という能力は、まったく別の脳のネットワークで処理されているということです。
実際、うつや不安の傾向が強い人ほど、自分への自信が極端に低くなることも報告されており、これは「自分をどう認知しているか」が心の安定に大きく関係していることを示しています。
これらは、誰かのために動くためにはと考えることで注意を意識的に外に向けられ、自信が少なくなる傾向があるのです。
なぜなら、私たちの頭の中、特に前頭前野と言われる理性をつかさどる部分は衝動的な判断を避けるようになっています。誰かを喜ばせたい、相手のために行動したいと思っている時ポジティブな情報処理に使われている間、暗い思考ではなく優先処理として、落ち着いた状態をたもつことができるからです。
心理学の研究では、ポジティブな活動(人の役に立つ、親切な行動をする等)や思考をするだけで、脳内に報酬系(ドーパミンなど良い気分になる物質)が働き、ストレスホルモンや不安を鎮める効果があると示されています。つまり、他者を喜ばせる行為は自分自身の感情も明るくし、自然とネガティブ思考が生じにくくなるためです。
また、リフレーミング(認知の再解釈)といって、建設的な考えに変わるきっかけになるいう心理学もあります。
情報リテラシー教育にメタ認知は生かせるのか?
次に、大学の情報リテラシー教育に関するアメリカの研究をご紹介します。 この研究では、図書館の教育担当者やガイド資料を分析したところ、情報の信頼性を教える際に「自分の判断を振り返る」というステップがほとんど含まれていないことが明らかになりました。
理論的には「情報評価にメタ認知は不可欠」とされているのに、現場の指導ではその視点が抜け落ちてしまっている。
特にSNSやネット検索が主な情報源になっている今、「自分はどうしてこの情報を信じたのか?」と考える習慣は、誤情報に流されないための大事なスキルになります。 ここでもメタ認知の力が試される場面が増えているのではないかと考えられます。
情報を見た時に、自分がなぜこれらを信じたくなったのか、それを考えるにはどうすればいいと思いますか?
健康情報を見極める力とメタ認知の関係
さらにもう一つ、面白い研究をご紹介します。 Redditユーザー502人を対象に行われたこの研究では、健康に関する情報をどれだけ正しく判断できるかは、メタ認知によって大きく左右されることが明らかになっています。
特に「情報の真偽を自分でチェックする力」は、メディアリテラシーだけでなく、「自分は本当に正しく理解できているのか?」と考えるメタ認知の力に支えられているのだそうです。
ただし、情報にさらされすぎている人は、このメタ認知の力がうまく働かなくなる傾向も見られました。 つまり、「知りすぎること」が、かえって自分の判断力を曇らせてしまうリスクもあるのだと気づかされました。
情報過多にならない程度に、一日の情報する領域を絞るのもありかと考えられます。マインドフルネスも効果的だといわれています。ただし、精神疾患や、トラウマを書かている人には悪影響が出る可能性も指摘されています。
頭が働かない時はしっかり休息をとるのが良いでしょう。
問題解決力を高める学びと、メタ認知の深まり
メタ認知は、いわゆる「学び方」そのものにも関係しています。 オーストラリアの大学で行われた問題解決型の授業(PBL)では、たった一学期で学生の汎用的な問題解決力が13%も向上したという結果が出ていました。
ちなみに、「13%の向上は、10人中1人以上が明らかな改善を示すレベル」です。
また、インドネシアの小学生たちを対象にした研究では、「問題をどう理解するか」が、テストの得点にかなり強く影響していたという結果も出ています。
つまり、自分で課題を考え、試行錯誤しながら解決していくプロセスの中で、自分の思考を振り返る力=メタ認知が育つということです。 これは、年齢や科目に関係なく活用できる視点だと感じました。
次回予告「考えをやめた人間に未来はない」
さて、ここで質問です。
Q.記事を見る時、あなたはどれほど情報を飛ばせましたか?
この記事を見て、考えることが本当に正しいのかを考えてから、次回の記事を読んでくださいね。
引用文献
今回、参考にした文献やウェブサイト一覧です。
- Metacognition-Associated Factors in Physical and Occupational Therapy Students: A Cross-Sectional Study - PMC
- How Local and Global Metacognition Shape Mental Health
- The Inclusion of Metacognition in Source Evaluation Instruction – DOAJ
- Fact-Checking of Health Information: The Effect of Media Literacy, Metacognition and Health Information Exposure
- Improvement in generic problem-solving abilities of students by use of tutor-less problem-based learning in a large classroom setting - PubMed
- Frontiers | The influence of students’ problem-solving understanding and results of students’ mathematics learning